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マンション管理の必須知識:外壁補修の基本とポイント

マンション管理の必須知識:外壁補修の基本とポイント

マンションの外壁は、居住者のみなさまが快適に暮らすための重要な役割を果たします。外壁の劣化は見た目の美観を損なうだけでなく、防水性や耐久性を低下させ、建物全体の価値や安全性に影響を与えます。

 

ここでは、外壁補修の目的や必要性、外壁劣化のサイン、工事の種類について解説し、建物維持管理の重要性を深掘りします。

マンション外壁補修の目的

外壁補修の目的は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

 

1 防水性や耐久性の向上

 

マンションの外壁は建物を風雨や紫外線などの外部環境から保護するだけでなく、建物内部構造の耐久性を維持する重要な役割を担っています。経年劣化などにより防水機能が低下することで、建物の耐久性や安全性を大きく損なうリスクを伴います。

 

◆鉄筋コンクリートの中性化とその影響◆

鉄筋コンクリート構造は、コンクリート内部のアルカリ性環境(ph12~13)によって鉄筋表面に保護被膜を形成し、腐食を防いでいます。しかし、以下のような要因によって「中性化」が進行すると、鉄筋が錆びやすくなり、建物全体の耐久性が低下します。

  

   ・炭酸ガスの侵入

   大気中の二酸化炭素(CO2)がコンクリート内部に浸透し、水分と反応して炭酸化を引き起こします。この結果、アルカリ性が失われ、鉄筋を保護する不導体被膜(保護被膜)が崩壊します。

 

・水分の侵入

   外壁のひび割れや塗膜の剥がれによって雨水が内部に侵入すると、コンクリート内部の鉄筋が錆びてしまします。錆びることで体積が膨張し、周囲のコンクリートを押し出し、破壊する現象がおこります。

 

・塩害や凍害

   海岸近くの建物では塩分が浸透しやすく、また寒冷地では凍結と融解を繰り返すことでコンクリートが劣化しやすなります。

 

 

2 事故防止と安全確保

 

外壁タイルの浮きや剥落は、第三者や住民への重大な事故につながる可能性があります。定期的な打診調査や補修工事を実施することで、タイルの剥落を未然に防ぎ、居住者の安全を確保することができます。

 

マンションの外壁タイルの剥落・落下は、住民や通行人にとって重大な危険を及ぼす可能性があるうえに、管理組合にとっても多大な損害を招きます。

実際に、マンション外壁タイルが経年劣化により剥落し、通行人が負傷するという事故は全国で発生しています。この場合、マンションの所有者である管理組合が、建物の管理責任を問われることになり、適切な点検やメンテナンスを怠っていたとなると損害賠償に対する責任は重くなります。

 

このような法的リスクから回避するためにも、適切な点検と修繕は必要です。

 

 

3 資産価値の維持・向上

 

外壁補修は、マンションの外観や機能性を改善し、その結果、資産価値を維持・向上させる効果があります。

まずマンションの外観は、購入希望者や賃貸入居者が最初に目にする部分です。

外壁の汚れが目立つ建物と、きれいに塗装・補修された建物とでは、印象が大きく異なります。特に築年数が経過したマンションでは、見た目の美しさが維持されることで、築浅の建物とそん色のない外観を保つことができ、購入希望者にとって魅力的に映ります。

 

また、不動産評価においては建物の状態が非常に重要な要素となります。外壁が劣化したまま放置されているマンションは、管理状態が悪いと判断され、査定価値が低くなる傾向にあります。逆の場合、高い評価を受けるのは当然であり、売却時や賃貸募集の際に有利になります。

 

令和4年度より、マンションの管理計画を地方公共団体が認定できる制度が導入されたことにより、適切な修繕計画を実施しているマンションは市場評価があがりやすくなっています。(マンション管理計画認定制度)

外壁補修の種類と技術

外壁補修は、建物の劣化状況を調査し、適切な工程を順番に実施することが重要です。以下では、補修作業を行う一般的な順序に沿って解説します。

 

1 高圧水洗浄

外壁の補修作業を行う前に、建物の表面に付着した汚れやカビ、藻などを取り除く必要があります。これを怠ると、塗料や補修材の密着が悪くなり、耐久性が低下する恐れがあります。

 

外壁補修は、建物の劣化状況を調査し、適切な工程を順番に実施することが重要です。以下では、補修作業を行う一般的な順序に沿って解説します。

 

高圧水洗浄: 水の圧力で汚れを落とす

薬液洗浄: カビや油汚れがひどい場合に使用

バイオ洗浄: 微生物を活用し、再発防止を目的とした洗浄

☆ポイント☆ 洗浄後はしっかり乾燥させることが重要です。

 

2 コンクリート補修

洗浄後、外壁のコンクリート部分にひび割れや浮きがないかをチェックし、必要な補修を行います。

 

クラック補修(0.3mm以下のひび割れ):シール材を注入し、防水処理を施す

爆裂補修(鉄筋が露出している場合): 錆を除去し、モルタルや樹脂モルタルで補修

中性化防止処理: コンクリートの劣化を抑えるために防水塗料を塗布

☆ポイント☆ コンクリートの劣化を放置すると、外壁全体の強度が低下するため、適切な補修が重要です。

 

3 タイルの張替え・補修

コンクリート補修と並行して、タイルの欠損や浮きを調査し、適切な補修を行います。

 

タイルの張替え: ひび割れや欠損が激しいタイルは新しいものと交換

エポキシ樹脂注入工法: 浮いたタイルにエポキシ樹脂を注入し、ステンレスピンで固定

クリア塗装(オプション): タイルの劣化を防ぐための保護塗装

☆ポイント☆ タイルの補修が不十分だと、建物内部に水が侵入する原因となるため、適切な点検と補修が必要です。

 

4  シーリング(コーキング)の打替え

外壁の目地に充填されているシーリング材は、時間とともに劣化し、ひび割れや剥がれが発生します。これを放置すると、雨水が侵入し、建物内部を腐食させる恐れがあります。

 

シーリング材の撤去: 古いシーリングを取り除く

プライマー塗布: 新しいシーリング材の密着を向上させるために塗布

         新しいシーリング材を充填(変成シリコン・ポリウレタンなど)

仕上げ: 余分なシーリング材をならして仕上げる

☆ ポイント☆ 適切なシーリング材を選ぶことで、長期間にわたり防水性能を維持できます。

 

5  鉄部塗装

建物の鉄製部分(屋外階段・手すり・庇など)は、雨風の影響で錆びやすいため、定期的な塗装が必要です。

 

ケレン作業(錆や古い塗膜の除去)

防錆処理(錆止め塗料を塗布)

仕上げ塗装(ウレタン系・シリコン系塗料を使用)

☆ ポイント☆ 鉄部塗装は4年に1回程度のメンテナンスが推奨されます。

 

 

6 塗装の塗り替え

外壁全体の補修が完了した後、最終的に塗装を行います。塗装は、防水性・耐久性・美観の向上を目的としています。

 

下塗り(シーラー・プライマー塗布)

中塗り・上塗り(2回以上の重ね塗りで耐久性を確保)

 

適切な順序で施工することも、建物の寿命を延ばし、長期的なメンテナンスコストを削減することにつながります。

 

建物劣化のサイン

以下の劣化サインが見られる場合は、早急な対応が必要です。

 

1  塗装面の剥がれ

防水機能が低下し、内部の鉄筋が腐食するリスクがあります。

 

2  チョーキング現象

外壁に触れると白い粉が手に付着する現象で、塗膜の劣化を示しています。

 

3  クラック(ひび割れ

0.3mm以上のクラックは構造的な問題に発展する可能性があるため、早急な補修が必要です。

外壁補修の進め方

1  建物診断

信頼できる工事会社に調査を依頼し、目視や触診、打診調査や赤外線サーモグラフィーを用いた診断を行います。

 

2  施工計画の立案

診断結果を基に、補修内容や工事スケジュールを計画します。管理組合や住民と協議し、最適な工法を選択します。

 

3  信頼できる工事会社の選定

施工実績が豊富で、見積もりやアフターサービスが明確な会社を選びましょう。工事前後の記録を適切に残すことも重要です。

まとめ

外壁補修の中でも大掛かりとなるのが塗装工事です。

10年に1度の頻度で実施するのが望ましいですが、現実的には12年~13年サイクルの大規模修繕工事のタイミングで実施されることがほどんどです

 

一般的なマンションの耐用年数から考えると最低でも3回は行う必要があると考えられます。短期的なコストを抑えるために安価な塗料を選ぶか、高価な塗料を使い塗り替えの回数を減らすかは、専門家の意見を参考にしながら予算に応じて検討しましょう。

 

マンション外壁の補修は、建物の耐久性と安全性を維持するために欠かせない工事です。

適切なタイミングで専門業者に調査と補修を依頼することで、建物の寿命を延ばし、みなさまが快適に暮らせる環境を保つことができます。

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