2回目以降の大規模修繕工事が重要なワケ
マンションの大規模修繕工事は、建物の長寿命化と資産価値の維持において重要な役割を果たしています。
その中でも「2回目以降の修繕工事」は特に重要です。1回目の修繕を無事に終えたとしても、2回目の修繕は単なる繰り返しではなく、次の大きなステップとしてしっかりと計画を立てる必要があります。
今回は、2回目の修繕工事の重要性と3回目以降の工事を見据えた準備について詳しく解説します。
2回目の修繕工事が重要な理由
大規模修繕工事は、平均修繕周期としては「13年」が最も多く、次いで「12年」「14年」「15年」と、全体の約7割が築12〜15年で1回目の工事が実施されます。
これは、2022年に国土交通省が公表した、マンションの大規模修繕工事に関する実態調査からも明らかになっています。全国的におこなわれた調査として、現時点ではこちらが最新のものとなるため、この調査結果にもとづいて考察を深めていきたいと思います。
【PDF】国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査
次に2回目の大規模修繕工事が行われるのは築26〜30年の時期が一般的です。この2回目の修繕工事が重要な理由は、建物の老朽化が進んでいるだけでなく、今後の修繕費用を見据えた適切な計画が求められるためです。
劣化状況や工事範囲にもよりますが、1回目と2回目の工事内容はそれほど大きく変わらないことが多いものの、注意すべき点は「3回目以降の工事費用が急増する可能性がある」ということです。
築30年を超えると、建物の劣化はさらに進み、外壁の再塗装や防水工事に加えて、アルミサッシや設備の交換、エレベーターや玄関ドア、オートロックシステムなどの設備系の更新の必要時期に相当するためです。
実際に実態調査の結果からも、工事回数が多くなるにつれて、建築系工事、設備系工事の割合が高くなる傾向があるということが明らかになっています。
当時の調査で3回目を実施したマンションは、現在分譲されているマンションと比較するとエレベーターやオートロック・機械式駐車場などの設備が充実していないマンションが多いため、今の時期のマンションが3回目を迎えるころにはその割合は大幅に増えるでしょう。
3回目の修繕工事にむけた準備
2回目の大規模修繕を計画する際、最も重要なのは、長期修繕計画の見直しと将来に備えた修繕積立金の準備です。1回目や2回目の修繕で積立金が適切に設定されていない場合、3回目の修繕工事の際に大幅な不足が生じるリスクがあります。
特に3回目の修繕工事では、設備の老朽化が進み、交換や更新が不可避になるため、費用は1.5倍以上に増加することが想定されます。
また、最近の物価高による建設工事費の高騰は顕著であり、10年後20年後の工事金額がどれくらいあがるのかというのは試算が難しいところでです。建設工事費は過去10年で1.2倍に膨らんだといわれていますが、今後のことは様々な要因が絡んでくるため、同様に推移するとは断言できません。
ただ、今後もさがるということは考えにくいため、上がることを想定して見込んでおくことが必要です。
これらを考慮したうえで修繕計画・資金計画を見直し、積立金が不足することが明らかな際は、値上げや借り入れも検討するなど早い時期からの準備が望ましいです。
そして、3回目以降の修繕費用を抑えるために、2回目の工事でやるべきことは、ずばり、早めのメンテナンスです。
鉄部の塗装や屋上の防水工事、バルコニーや共用廊下の防水工事など、定期的な点検と修繕を行うことで、劣化を抑え、将来的な大規模な修繕費用の抑制につながります。これら2回目までに済ませておきたい工事を先送りにしてしまうと、結果的に3回目の工事費用に大きくのしかかってきてしまいます。
綿密な計画とコミュニケーションがカギ
大規模修繕工事を成功させるためには、施工会社との連携が重要です。
1回目の工事が終わった後、次の工事まで疎遠になってしまうといったことは避けるべきです。
定期的にアフターメンテナンスを実施し、保証の範囲内であれば早急に手直しを依頼しましょう。点検により劣化の状況や必要な修繕箇所を把握しておくことで、2回目の工事にスムーズにとりかかることができるだけでなく、3回目の工事に向けた修繕計画もおのずとみえてくるはずです。
また、管理組合や修繕委員会が主体となり、入居者とのコミュニケーションを定期的に行うことも不可欠です。
修繕工事に関するアンケートを実施し、入居者が気づいた劣化や改善要望を反映することで、より効果的な修繕計画が立てられます。住民みなさまの協力を得ることで、修繕工事の進行がスムーズになり、工事期間中の不便を最小限に抑えることができます。
劣化や損傷の早期発見と対策
大規模修繕工事が行われる時期以外にも、建物の劣化や損傷のチェックは重要です。
これを怠ると、修繕工事が必要になるまでに劣化が進行し、費用がかさむことがあります。
特に築25〜30年という2回目の修繕時期には、日常的なメンテナンスを行い、劣化の進行を抑えることがコスト削減に大いに貢献します。
例えば、外壁のひび割れや鉄部の錆び、屋上防水の劣化などは、早期に発見して補修を行うことで、将来の大規模な修繕工事を先送りにせず、計画的に行うことができます。
これにより、急な費用負担を回避し、入居者の負担を軽減できます。
長期的な修繕計画の重要性
大規模修繕工事は建物の寿命を延ばすだけでなく、マンションの資産価値を維持・向上させるための重要な取り組みです。
特に、2回目の修繕工事は3回目以降の修繕費用を見据えた重要なポイントとなります。
マンションの大規模修繕工事は1回目、2回目、そして3回目以降で異なる課題が出てきますが、2回目の修繕工事は特にその後の工事費用を見据えた適切な計画と準備が必要です。
管理組合や修繕委員会は、長期的な修繕計画を立て、定期的なメンテナンスを行い、修繕積立金の見直しを定期的に実施することが求められます。また、建物の構造や設備、居住者のニーズを踏まえた柔軟な対応が、今後の修繕計画の成功に繋がります。
そのために住民や施工会社と密なコミュニケーションをとることが、長期的に見てマンションの価値を維持し、安心して暮らせる環境を保つための鍵となります。
これから2回目の修繕工事を迎えるマンションでは、ぜひ早めに計画を立て、必要な準備を進めていきましょう。
適切な対応を取ることで、将来的な負担を軽減し、快適な住環境を維持することができます。