大規模修繕工事における専門家の依頼先と役割
「大規模修繕工事」の合意形成にむけて、専門家をうまく利用しましょう!
大規模修繕工事の主体は管理組合です。
マンションや共同住宅の管理組合が直面する大規模修繕工事は、建物の健全性とくらしの快適さを保つうえで非常に重要です。
しかしながら、大規模修繕工事を実施するためには専門的な知識やノウハウが必要とされること、立案から工事がおわるまでの期間も長いことから、管理会社や施工業者任せになりがちです。
ただ、自分たちのマンションであり、多額の費用も管理組合が積み立てた修繕積立金を利用することから管理組合が主体であるということを忘れてはいけません。
そこで管理組合が専門家の力とアドバイスを活用し、円滑な合意形成を進めるための手法について考察します。
専門家のアドバイスの重要性
このようなトラブルが発生するかも!
1. 技術的な問題
大規模修繕工事には建築技術や専門知識が必要な為、管理組合だけで適切な計画を立てることが難しい場合があります。
建築の構造や設備に関する詳細な知識が不足している為、工法や範囲を適切に評価することができず、結果工事の品質や効果が低下する可能性があります。
一方で、専門家は建物の現状調査を行い、修繕の必要性や優先順位を正確に評価することができます。
経験と専門知識を活かし、建物の構造や設備の状態を的確に判断します。
修繕計画の策定においても、適切な工法や手順を提案し、するべき工事の範囲や内容を明確に示してくれます。
2. 予算の誤算
大規模修繕工事は膨大な費用がかかることがあります。
専門知識がない状況では、費用の見積もりが不十分であったり、予算が実際の工事に見合ってなかったりする可能性があります。
工事の途中で資金不足に陥ったり、工事の質や進行に問題が生じる可能性も考えられます。
管理組合の資金状況に応じ、予算の範囲内で最大限の効果が得られるよう、工事内容に優先順位をもうけ、適切な費用配分をするためにも専門家のアドバイスは必要不可欠です。
3. 法的な問題
大規模修繕工事は法的な規制や要件に準拠する必要があります。
建築基準法やマンションの管理規約などの法的な要件が存在し、専門家の助言を得ないまま進めることで規制違反や契約上の問題が発生する可能性があります。
たとえば、工事業者と住民間でトラブルが生じた際、当事者の責任割合や損害の賠償責任などが問題になります。
また、工事の品質において契約上の義務が果たされなかった際には工事の進捗にも大きく影響します。これらの事例において専門的な知識なくしては適切に対処できません。
4. 役員の不備・住民間トラブル
大規模修繕工事は計画から竣工まで一般的に1年~2年の期間を要します。
その間に役員の交代や引継ぎがあり、工事の計画や進行状況に関する情報が適切に伝達されない場合があります。
これにより、新たな役員が必要な情報や決定を欠いてしまい、工事の進行が滞ったり、間違った判断が下されたりする可能性があります。
また、費用の分担方法や負担割合、工事中の制限等に関して合意形成が十分にすすまなかった場合に住民間で軋轢が生じてしまったという事例もあるようです。
管理組合間での適切なコミュニケーションや情報共有は非常に大切です。
その際には専門家が意見調整役として重要な約割を担ってくれます。
専門家の知識と経験を大いに活用して管理組合の負担を減らし、円滑に合意形成を進めていきましょう。
専門家って実際誰に依頼する?
依頼先は管理組合のシチュエーションや目的に応じて以下の専門家に依頼してみてはいかがでしょうか。
専門家に関しては口コミや紹介を通して情報収集したり、行政機関等から情報提供をうけることも可能です。専門業者によるイベントや各種セミナーも利用してみるものいいかもしれません。
・建築士
大規模修繕工事の計画や設計に関与することができます。
建物の現状調査や修繕計画の策定、設計図の作成などを行います。
・設計事務所
建築設計や工事監理の専門家であり、設計図や仕様書の作成、工事監理や品質管理などを行います。
・大規模修繕コンサルタント
大規模修繕工事の経験豊富な専門知識をもち、建物診断から修繕計画の策定、業者選定から工事監理まで幅広い分野で支援を行います。
・マンション管理士
マンション管理に関する法的な知識に精通しています。
管理組合の代表として意見調整や業者との交渉など総合的なサポートをします。
・管理会社
日常の管理から工事の立案・業者選定まで管理組合運営業務をサポートします。
長期修繕計画と資金計画の作成も行います。
依頼の目的だけでなく、相性も重要なポイントです。
思っていたのと違った、なんてことにならないよう慎重に検討してくださいね。